第2章 出会い
訪れたのは、暫くの沈黙。
あれ?
俺、名前聞いただけだよな?
沈黙を破ったのは、何とも間抜けな俺の声。
「お……俺は、ジャン・キルシュタイン!お前は?」
吃りつつも女を見つめる。
そうだよな。
こういうのは聞く方が先に名乗るんだよな。
そんな俺の姿を見て、女がポツリと呟いた。
『…………サカシタ……ミサキ』
小さな声でも、答えてくれた事にホッとする。
「サカシタか。変な名前だな。」
女は首を振る。
『違うよ。サカシタは姓でミサキが名前。』
疑問が浮かび、眉を寄せて俯く女に見やる。
「は?何で逆に言ってんだ?」
んー。と少し考える素ぶりを見せ、女は口を開いた。
『何でだろう………。私、ちょっとおかしかったよね。気にしないで。』
顔を上げ、悲しそうな表情をする女を見て、何故か少しだけ胸が痛んだ。
「別におかしかねぇよ。今から訓練所戻るからよ……。ミサキ……でいいか?家、帰れるといいな。」
そう言って手を引いたら、ミサキの手がカタカタと大きく震え出したのが分かった。
『……い…え………?』
バッと腕を振り払い、蒼白な顔をする女。
『嫌だ!あの家には戻らない!もう……』
瞳からはポロポロと涙が溢れ出す。
『戻らない……戻さないで…………。』