第3章 モルヒネを追って
乗用車の後部座席から3人ほど出てきて、ドアが開いているバンへ移ろうとする。
「――!!」
その真ん中の人物を見て……俺は思わず叫んだ。
「婆ちゃん!!」
両脇を黒服に固められて無理やり歩かされてる小さなシルエットは、どう見ても婆ちゃんだ……!
ここに居た、という安心感と。
何をされるか分からない、そんな現状に不安とがない交ぜになる。
黒服たちは俺に気付いたようで、今にもこっちへ走り出そうとしていた。
「……っ」
「……待て」
咄嗟に構えようとした俺の前で、黒服の1人がそれを止めた。
この場にはそぐわない妙に冷静な声。
ソイツはフードを被っていて、顔が見えない。
だが、直感的に聞き覚えがあると思った。
――ジャリ、とコンクリートの砂利を踏みしめながらソイツが前に歩み出てくる。
俺から少し距離を取って立ち止まり、両手でフードをゆっくりと下ろす。
その下から現れた素顔を見て……俺は心臓が止まりそうになった。