第3章 モルヒネを追って
「マスター! ここじゃない場所、もっと奥の方からたくさんの音がします! 集まっています!」
ガスマスクの顔がこちらを向き、クリアが訴えてくる。
本当かどうかは未だに不明だが、クリアの耳は常人以上に優れている…らしい。
その言葉が本当ならば、ここでこのまま戦っていても俺たちの方が圧倒的に不利だ。
「こっちは囮か」
クリアの声に気付いたミンクが、いち早く工場の奥へ走り出す。
「おい、勝手に……ちっ!」
紅雀があとを追おうとした時、一度は倒れた黒服たちがゾンビみたいに起き上がってきた。
黒服の連中を剣の背で薙ぎ払いながら、紅雀が叫ぶ。
「埒が明かねぇ! ここは俺たちがどうにかするから先に行け!」
一瞬紅雀の身が心配になったが、紅時雨の仲間も居る。
ここは紅雀の好意に甘えるべきだよな。
「……わかった! ありがとな!」
今は迷ってる場合じゃない。
俺はミンク、クリアと一緒に工場の奥へ走った。