第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
だが、まだ気の抜けない状況なのは確かだ。
敵は長ものの武器だけでなく、雅のみぞおちに思いっきり蹴りを入れた。
「ガッ…!」
そのまま飛ばされて、地面に転がっていった。
「雅ッ!」
雅は気絶して刀も手元から離れた。敵がとどめを刺しに行った。
「やめろォッ!」
ガァッン!
敵が彼女の心臓を突き刺す直前、死んだふりをしていた彼女は足で敵の武器を蹴り飛ばした。
足を上げた勢いで後転して、刀をまた手元に戻して、武器がない敵にとどめを刺した。
ホッ
高杉は安堵の息をついた。
(敵を欺くときはまずは味方を欺くなんても言うが)
アイツは騙し討ちみてーなことはしないと思ってたが。今回の敵がそれほど困難ってことか。
だが、先生を奪った烏が何故こんな場所に…?
ドシュッ!
「ッ!」
戦いの中、高杉は左腕に深手を負ってしまった。
戦での疲労が重なって、動きにボロが出たのだ。
敵もそれが分かっていて、あえて相手の体力を削るような戦い方をしていた。
「し、晋す…!」
この一瞬、私は敵から目を背けてしまった。
医者の本能で、怪我した人の方を心配してしまった。
殺し方を熟知している敵から目を背けたことは、本当にマズかった。
敵は私を斬り殺すのではなく、懐を長ものの先で強く押した。
押した先には崖があり、視界には空が映った。
(あ…)
迂闊だった……
ガシッ
「!」
落ちたと思いきや、高杉が私の腕を掴んで止めた。しかも、深手を負った左腕の方で。