第1章 Linaria~この恋に、気づいて~
クククッ…。
良い拾い物をしたなぁ。
アイツが、アンタの事を血眼になって探していたぜ?
お前にはその器は窮屈だろ…?
俺はアンタの"中身"が知りてぇだけだ。
何者かってなぁ…。
場合によりゃあ、始末するだけの話だ。
また、死ぬのか…だって?
お前…。
まぁ、良い。
俺はお前に手を貸すぜ?
予言してやる。
お前は次の月が美しい夜にかぐや姫となって俺の元へと降りてくる。
この、血に濡れた俺の手を掴みにな…。
【Linaria…6】
「土方さん、あの女嘘つきですゼィ」
俺は引きずりながら部屋を後にすると総悟が#苗字#の事を嘘つきと言う。
「あぁ?どう言う事だ?」
俺がそう聞くと総悟は腕を組みながら口を尖らせ話を続ける。
つーかよ、いい加減に自力で歩け!
「童顔にも程があるし、それに胸だってありゃしません。あぁ、土方さんの好みはあーゆーツルペタ幼女が好きなんですねィ。土方さん、児童ポルノで現行犯タイほっ…ってぇーっ!!」
スパーンと2度目の気味の良い音が廊下に響き渡る。
「良く喋る口はこれか、あぁ??」
何がツルペタ幼女だ、児童ポルノだ。
俺は総悟の両頬を片手で潰す。
ったく、コイツに迎えなど頼むんじゃなかった。ろくな事ぁーねぇ。
「はぁ、ひひかははふのこおいは…っつー…」
強く潰したせいか、総悟の頬が真っ赤だ。ってか、何言ってるか解らねぇ。
手を離してやると頬を抑えながら俺を睨む総悟。
それに対して俺は一つため息を吐く。
そんな事をやっているうちに病院の駐車場へと着いた。
俺は総悟を助手席へと突っ込み、一息入れる為に煙草に火を着ける。
ふぅ。
これがねぇと、生きた心地がしねぇな。
そんな事を思いながら煙草の味を堪能していると総悟が口を開いた。
「土方さん、アンタは姉上の…」
危うく咥えていた煙草を落とす所だった。
まさか此処で総悟の口からその言葉が出るとは思わなかった。
俺らは暫く無言でいると、先に沈黙を破ったのは総悟だ。
「土方さん、今のは忘れて下せェ…」
「そうか…」
それから屯所に着くまで俺と総悟は一切口を聞くことは無かった。