第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【夢、うつつ…。】
声が出ないと言う事は、私にとって好都合だ。
なぜならば、余計な事を話さなくて済むからだ。
何を聞かれようが、されようが、首を振るだけで済む。
私は彼女が戻って来る前に必死に自分のこの世界での設定を作り上げる。
声が出ない事を筆頭に、自分の名前しか覚えていない、つまり記憶喪失と言う設定にした。
これが一番手っ取り早いし、表に出さない限り、安全だ。
設定を作っていると、廊下からの気配が殺気立つ。
彼女が出て行った後に現れた気配。
あぁ、視線と言うか気配と言うか…。
何とかならないものか。
恐らくあの三馬鹿辺りだろう。
あの丸窓障子を開けると三人が居るんだろうな。
そう思いながら私は布団から抜け出し、その障子に手を掛け徐に開けた。
「皆さん何しているんですか?」