第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【※紅、咲き乱れるは罪の花】
俺だって、ンな事したくは無かった。
けどよ、仕方ねぇんだよ…。
お前の事をいくら探りを入れても何も出てきやしねぇ。
一つでもあれば普通に問うだけなのに、名前も、苗字も、出身も、何もかも…。
何一つ、だ。
だからお前に自白させようと思い、薬を食事に混入させた。
これが一番手っ取り早い。
俺は頃合を見計らい、名前に手をかける。
名前に触れる前は罪悪感が俺の頭の中を支配していた。
だが、
アイツの肌に触れた瞬間、
アイツの翡翠の瞳を覗き込んだ瞬間、
そんな罪悪感などは綺麗に消え去って行っちまった。
俺は夢中になってコイツに口付ける。
「んっ…はっ…」
この行為のせいか、出ない筈の名前の声…この場合は嬌声と言った方が良いだろうか、塞いだ唇から吐息と共に発せられた。
初めて聴く名前の声。
俺はもっと聴きたい、そう思ったら止まらなくなった。
「名前もっと、俺に委ねろ」
俺は#名前#の口を無理矢理こじ開け、舌をねっとりと絡ませた。
「はぁ、…んっ…っ」
名前との口付けは、
麻薬と同じ。
一度味わえば、虜にしちまう、それだけ甘く感じる。