第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【刻、繋いで…。】
冷たい風が、私の頬をそっと撫でる。
余りの寒さについ布団に深く潜り込んだ。
それでも布団が薄い為か、寒いのには変わりない。
その風に乗り、新しい畳のい草の香りが鼻腔を刺激し、深い眠りから私を目覚めさせた。
良い香り…。
私の部屋にはない香りだ。
こんな気持ちの良い目覚めなら、和室の部屋に決めれば良かったと今更後悔する。
ぐるぐる回る思考の中、未だに開かない瞼に力を入れゆっくりと目を開く。
すると、真っ白だった天井が、懐かしさを思い出す木目調の天井に姿を変え、私の瞳に映し出された。
此処は、何処なのだろうか。
何故、寝ているのだろうか。
ゆっくりと上半身だけ起き上がると、掛け布団の上に布が落ちた。
それを手に取ると濡れた手拭い。
そして生暖かい。
そう言えば、心なしか身体が怠く、掌にある布を見つめ熱が出ていたのかと、ぼんやり考える。
じゃあ、一体誰が…。
そんな事を思っていると、私の横にある障子が開かれた。