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【薄桜鬼】闇色夢綺譚~花綴り~ ※R18

第1章 闇色夢綺譚~花綴り~


【花、雪と共に…。】






季節はずれの桜が舞う。

優雅に、

美しく、

そして、儚く…。

私の頬に一つ、また一つと落ちては消え、それが花弁ではないと気付くのはもう少し先だ。

私は、あの世界で死んだ。

なのに、何故…。


「生きて、いる…」

死にたかった。
あのまま、あの人の手で死ねるのなら本望だと思っていたのに、

もう、生きている意味など無いのに、


何故、私を生かす。


今にも閉じそうな瞼に力を入れ、美しいと思い込んでいた空を見る。

空はコールタールの色。
舞い散る花びらは薄汚れ、それは花びらではなかった。


冷たい…。



あぁ、雪か。

通りで冷たい筈だ。

あの時、雪なんて降っていただろうか。
確か、あの時はバケツをひっくり返した様な雨が降っていた筈だ。

そう思い出し、視線を己の手元に移すと着物の袖がびしょ濡れになっている。
なのに、辺りは薄らと雪が積もっていた。


どう言う事だろう。
此処は何処なのか…。

まだ、あの世界で有るのなら、


もう一度、貴方に逢って謝りたい。


「まだ、泣いているのかな…」

今ある力で空に向かって手を伸ばす。

あの時は繋げなかった手を、今度こそは…。


そこで私の意識は途絶えた。




揺れる、ゆれる。

廻る、まわる…。


冷たい花びら舞い散る中、私の記憶は全てを忘れる。

あの世界で過ごした事、

あの世界で愛した事、

あの世界で私を愛してくれた…


全ての事を…。



お前にはそんな物必要ない。

独りで生きて、死ね。


そう言われている様な気がする。


誰に?

分からない…。



何故ならば、




私は…。

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