第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【囁、吐息まじりに】
「んぁ?何か文句でもあんのか?」
言いたい事があるならはっきりしろ。
どうしてこうなった…。
「…っ!!!」
首が取れる…のではないかと言うくらい首を振り回す。
あぁ、そんなアメジストの様な美しい瞳で人をゴミを見るみたいに蔑んだ瞳で私を見んといて下さいっ!
つーか、アンタの眼力だけで私は赤子の手を捻る様に簡単に射殺せますわぁっっ!!
と思いながら首を振っていると、何となく伝わってしまったせいか、彼の眉間の皺が更に深くなり、更に目付きが鋭くなる。
あぁ、もう耐えられない…。
う、ウワァァァン!
滅相もございません!
こんなに美しくてお強い貴方様に直接監視…じゃなかった、守って頂けるだなんて光栄でございますぅぅぅウワァァァンっ!
半泣きになりながら畳に額を付けて平伏していると、目の前の美形か溜息を吐きながら口を開く。
「はぁ…仕方ねーだろ。皆、出払っちまってるんだ」
土方歳三。
鬼の副長と謳われ、この新選組を率いる。
私がトリップしてしまった世界、薄桜鬼の登場人物の一人だ。
正直、男性と二人きりになるのは結構苦手で、何故なら沖田総司のせいだったりもする。
彼は私の事を酷い顔とか言いながらも、触れる手は酷く優しい。
…って、何を思い出しているのよ。
何でこんなにも彼の事が気になるの?
好きなの?馬鹿なの?死ぬの…?
「名前…」
一人で悶々と沖田総司の事を考えて居ると、彼とは違う雰囲気で私を呼ぶ。
やだ…
そんな、甘い声で私を呼ばないでよ…。
って、元から彼の声は凄く甘くて何となく恥ずかしいからそのまま平伏していると彼が立ち上がる気配がした。
あぁ、もう!落ち着いて、落ち着くのよ私っ!
ドキがムネムネしていると、土方歳三に無理矢理顔を上げさせられた。
「…っ!!」
彼の瞳に私が映る。
「名前」
徐々に近付く私たちの距離。
再び呼ばれた私の名前。
私の顎に掛かる彼の指先が熱くてどうにかなりそう。
お願いだから、
そんな風に私を見つめないで…。
骨までとろけてしまいそう…。