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【薄桜鬼】闇色夢綺譚~花綴り~ ※R18

第1章 闇色夢綺譚~花綴り~


【侵、緩やかに】







原田左之助から手渡されたのは、あの美しい刀だった。

私は首を振りながら自分のではないと左之さんに押し返す。

「…名前ちゃん、だったよな?名前ちゃんがその刀を見た瞬間、君の様子は尋常じゃなかった」

確かに左之さんの言う通りだった。
このコを見た瞬間、知らない筈なのに、早く触れなければ、抱き締めてあげなくてはと思ったんだ。
刀に魂が宿ったみたいに泣きながら私を求めて居たんだ。
触れた瞬間に、このコの感情が流れ込んで来て…。

「だから、きっと名前ちゃんので間違いない」

そう思い返していると左之さんは間違いないと言い、今度はきっちりと握らされた。

だけど、私が所持しても良いのだろうか。

「あぁ…このご時世、何があるか解らない。もし、その様な事になっても直ぐに#名前#ちゃんを助けられるとは限らないし」

まぁ、時間稼ぎと言うか、気休め程度と言うか…。

そう言った左之さんは私の頭に手を置き、微笑みを見せた。


「……」


エロい…。


そうじゃなくて。

左之さんは私を安心させる様に言っていたけど、本当は違うに決まっている。

私は雪村千鶴みたいに共通する事がないし、本当に得体の知れない人物。
それなのに、このコを持たせるなんて…。

きっと、泳がせて自分らに危害が及ばないか監視するつもりなんだ。

「あぁ、名前ちゃん…」

考え込んでいると急に名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がった。

そんな動揺を隠しながら私は左之さんに何と言う様に首を傾げる。

「…っ、総司の奴にはあまり近付くなよ、って言っても彼奴から寄って来るんだったな…」

はぁ、と頭を掻きながら溜息を吐く。

本当にどうにかして欲しいのだけれど…。




拒めない…。



結末を、知っているから?



解らないけど、



放って置けない…。



「名前、ちゃん…」



この時、私は左之さんに呼ばれていた事にも気付かない程、沖田総司の事を考えていた。
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