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【薄桜鬼】闇色夢綺譚~花綴り~ ※R18

第1章 闇色夢綺譚~花綴り~


【心、その行方】







「あーあ。泣いちゃった」

そう言った総司は、徐に立ち上がると、彼女の後ろに回った。

「何人の女を泣かせば気が済むんですかね、ウチの副長さんは」

若干意味は違うが確かにと思う所はある。

俺?

俺は皆平等だ。

と、言っておく。


…話は逸れたが、総司は土方さんに喧嘩を売るような事を言い、普段とは違う表情で彼女を包み込む。
そして、その腕は彼女の顔にたどり着き、掌は彼女の美しい瞳に影を作った。


"コレは、僕のだから"



先程、巫山戯た事を抜かした人物とは思えない程、包み込んだ腕は優しかった。
そう思ったのはきっと俺だけじゃない筈だ。
周りを見ると皆、同じく目を丸くさせていた。

勿論、千鶴ちゃんも。


皆が驚いている隙に、総司と彼女はこの部屋から居なくなっていた。
それに気付いたのは暫くしてからだった。

「ったく、総司の奴は…」

静まり返った部屋に響いたのは土方さんの声だった。

「ま、まぁ、良いじゃないか」

総司が珍しく何かに興味を持ったんだ、と近藤さんが土方さんをなだめる。

「近藤さん、素性も解らねぇ輩なのに何を呑気な事を」

そんな言葉を土方さんに返された近藤さんは、ただ笑うしかなかった。

土方さんはそう言っていたが、きっと土方さんも疑ってはいないだろう。
勿論、俺も、皆もだ。

皆、彼女に魅了されたに違いない。

総司とはまた違う澄んだ翡翠の瞳に翡翠に琥珀を乗せた様な髪。
そして、着物から垣間見る白い素肌は雪を思わせる。
俺は土方さんが抱き抱えて連れて来た時、彼女の事を天女かと思ったくらいだ。

「おい、原田」

土方さんが俺を呼ぶ。
どうやら長い時間考えていた様だ。

「ちぃと、頼まれてくれねぇか?」


そう言った土方さんは顎で彼女の物だと思われる刀を指す。
どうやら、刀を渡して泳がせてみると言う事だ。
まぁ…もし、俺らに斬りかかって来たとしても所詮女と男だ。早々やられたりはしないだろう。

「女の扱いは慣れているだろう」

そりゃ、アンタもだろう…と言ってやりたかったが、我慢だ。

「はいはい、仰せのままにっと」

俺は美しい色合いの刀を握り、彼女の部屋へと向かった。

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