第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【戯、真実は】
「あーあ。泣いちゃった」
そう言った沖田総司は私を後から抱きしめるような感じで私の目を隠す。
「何人の女を泣かせば気が済むんですかね、ウチの副長さんは」
相変わらず沖田総司の言う事は色々思う所はあるけれど、こうして隠してくれている、直ぐ側に温もりがあると言うだけでも、今の私には何よりも安心出来た。
だって、私からは誰にも縋る事が出来ないから。
怖いの。
私にとって、知っているけど知らない世界。
親、兄弟、私が知っている人、私を知っている人…。
誰も居ない。
そして、この美しい刀。
この子が私を呼ぶの。
ほら…今もずっと私を求めてるの。
ねぇ…。
アナタは私の事を知っているの?
気付いたら、私に宛がわれた部屋にいた。
「はい、使いなよ。酷い顔が更に酷くなってるからこれで隠してね」
と言った沖田総司。
殴ってやろうか、コノヤロー。
酷いのは解っているけど、本当に失礼な奴だよ。
とか言いつつ、渡された布はしっかりと受け取り、それに顔を埋めた。
「…君って、結構泣き虫なんだね」
そう言われて私は首を傾げる。
あれ?
私、泣いたの今回が初めてだよね…?
布で半分顔を隠してチラリと沖田総司を見やると、あの嫌味ったらしい顔をして隠していた布を剥ぎ取って来た。
「っ!!」
ちょっ…!何すんの、この人は!
うわ、本当に不細工ってマジでどうにかして欲しい。
あぁ…ほら、違う意味で涙が出て来ちゃった。
沖田総司はやはり要注意だ。
「ねぇ…」
そう言って、私の腕を拘束する沖田総司。
「その酷い顔を見せても良いのは…」
僕だけ。
何で、キスしてるの?