第1章 2人の距離
「す、すみません!遅くなりました。」
割と早歩きで来たのになー。と思いながら謝るとフフッと笑って机に肘をついてるニノさんがいた。
「いや、気にすんなよ。そんな待ってないし。とりあえず荷物置いたら?」
そう言って私の持ってるメイク道具一式を見る。
仕事帰りだからかなりの大荷物だ。
「メイクさんの神崎さんでしょ?楓ちゃんから聞いたことあるのよ〜」
そう言って私の隣座んなさい。と言ってくれたのは女優さん。
どうやら楓さんの知り合いらしい。
楓さんは結構業界で有名で良く1人でいる時も知らない人に楓さん経由で話しかけてもらえることがある。
「あれ、そっか。んじゃー。紹介いらないね。」
私に飲み物のメニューを渡しながら言うニノさん。
するとニノさんの隣に座ってた俳優さんが
「いや、俺知らないから紹介してよ」と言ったので挨拶しようとしたらニノさんに止められた
「いや、いーよいーよ。あなた紹介されなくて。知ったら減っちゃうから。」
何故かそーねそーね!と悪ノリする女優さん。
なんでよ。減んないだろー。俺一応かなり先輩なんだけど。と言う俳優に手をひらひらさせて「とりあえず一息つかせてやんなさいよ。飲み物決まった?」と聞かれたので笑いながらはいと言った。
そして飲み物が出て来て乾杯した後改めて自己紹介させていただくとちょっと嬉しそうだった。
「良かったー!由梨ちゃんまで俺を蔑ろにするかと思ったよ。」
と言ったので皆んなで爆笑した。
ニノさんの言った通り2人は中々面白い方達で緊張感もなく楽しくお話しすることが出来た。
帰りにしっかりと挨拶し、タクシーを拾おうとしたらニノさんに引き止められた。
「送ってくよ。」そう言ってキーケースを軽く見せるニノさん
そういえばお酒は頼んでなかったなと思いありがとうございます。とお礼を言った。
ニノさんの車はニノさんの香りがして抱きしめられた時を思い出し少しドキドキした。
隣どーぞと言われたのでそれをやんわり断り後部座に座った。
「気にしなくていーのに。」そう言って笑うけどニノさん。職業柄気をつけて下さいよ。と言ったらハハッと笑われた