第1章 2人の距離
ニノさんから連絡が来たのはそれから数日がたったころだった。
「…はい。」
少し緊張気味に電話に出るといつもの笑い声が聞こえた。
それを聞いて緊張感がなくなる。
「由梨さー。中々連絡くれないから本物か確かめてみた。あなた、本物ね?」
笑いながらそうですよ。と返すとフフッと笑うニノさん
「んーとさ。これといって用事はないんだけど。…あ、そうだ!今日は飯大丈夫?俺今から何人かと飯食いに行くんだけど」
そう言って一緒に行くメンバーを聞くと中々大御所の女優さんや俳優さんの名前を言うニノさん
「いやいや!…私がご一緒しても大丈夫なんですか?」
やめた方が…と言おうとしたら大丈夫の一点張り。
「結構面白い人達よ?…由梨気にいると思うし」
と中々失礼、いや上から目線で言うニノさん。
一度確認してから折り返します。と電話を切りヒロトに電話した。
コール音だけでドキドキする。
「はい。」そう言って出るヒロトに息を飲む
思わず話せないでいると「なんだよ。お前から電話してきたのに。…もしかして。なんかあったか?」
言葉が少しキツくなったのに慌てて話し出した
「ち、違う!あのね、今日女優さんからご飯どうかって。」
ニノさんの事は言えなかった。
ヒロトは、ふーん。とその後考えて場所を聞いてきたがそういえば聞いていない。
その事を伝えると「…まー。いーや。俺今日帰れないからさ。」
そう言って早々に切った。
はぁ。と溜息が漏れる。
それは多分ヒロトが浮気するのを黙認しているから。
今日の帰れないは恐らく浮気相手。
ヒロトの事を振り払いニノさんに行ける事をメールで伝えると、わかるかしら?とメッセージ付きで場所のURLが送られてきた。
わかるかしら?って。
どんな顔して送っているのだろうと思い笑ってしまった
それと同時に優しさが滲み出ているこの一言に感謝した。
女性のフリしてくれている。
まるで秘密の友達が出来た気分。
心がじんわり暖かくなるのがわかった。
言われた居酒屋に着くと店員さんに一ノ宮さんは居ますかと聞いた。
これはニノさんが一ノ宮って言えば分かるからと連絡をくれていたから。
早々に案内され部屋に入ると既に揃っていて私が一番最後だと言うのが見て取れた