第1章 2人の距離
意を決して話す事にした。
「あの…。私、チェックがあるんです。においの。」
暫く私の言葉を飲み込み考えて
「それはさ、つまり、浮気の?」
まあ、そんな感じです。そう言うとまた暫く考え込み納得したみたいだ
「由梨さ、携帯貸してよ。」
携帯電源でも落ちたのかなと思いロックを解除して渡すとふんふ〜ん。と多分嵐さんの曲を口ずさみながら何かをいじり返して来た。
一ノ宮 和美(いちのみや かずみ)
誰だ。これ。
私が不思議そうに見るとニノさんはフフッと笑った
「俺の名前入ってたら。怒るでしょ?」
「えっ。…ていうことはこれ。ニノさんの?…そんな!いただけません!」
慌てて消そうとするとそっと携帯を操作する手を握られた。
「いーから、さ。…もらっといてよ」
ね?といってニコッと笑い立ち上がり握っていた手を引き私も立たされた。
「俺もう一本吸ってくからさ。お先にどーぞ」とニコッとしたので私も失礼します。と一礼して先に会場に戻った。
戻る途中。携帯を見るとヒロトからメールが来ていて、帰りが遅くなるとのこと。
わかりました。頑張ってね。と返事をしてしまい込んだ。
一ノ宮和美という偽名はきっとヒロトの事を思ってそうしてくれたのだろう。
実際私の携帯には男性の連絡先といったらヒロトしか居ない。
もしヒロト以外の男性の名前がいたと知った時には…
考えたくない
パーティーから数週間が立っても私はニノさんに連絡を取れずにいた。
一ノ宮和美という名前を見てキュっと苦しくなる。
ヒロトがこの連絡先の正体を知ってしまった時の事を想像するだけで寒気がするのに消せないでいる。
それくらい優しさが嬉しかった。
ある仕事の日。私は週末の特番生放送の歌番組であるアーティストについていた。
彼の名前は雪乃 空(ゆきの そら)。ポップミュージシャン。
「由梨ちゃんさー。専属なってよ。」
何度か仕事させていただいている彼は私のことを気に入ってくれたらしい。
「今はまだ誰にもつく気ないんですよねー。でも。凄い嬉しいお誘いです。喉から手が出るくらい」
そう言うと素直じゃないなーと笑っていた。
実際彼とはとても波長が合うし仕事に対しての姿勢や何より彼の性格や雰囲気があったかくてとても仕事しやすい。