第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
「…え、あれ…?」
どうしてこうなった。
気付いたら綺麗に正座して座っていた。
「記憶がない…だと!?」
最初と最後の記憶がすっぽりと無くなっていたのだ。
「え、ダメでしょう、流石に…」
もし、仮にも最後までしちゃって、それが三成様にバレたら、
「私、明日の朝日拝められるかなぁ…」
はぁ、と一息ついて身なりを整える。整えると言っても軽くだ。
記憶が無いから何とも言えないが、いつの間にか着替えは済んでいた。ってか、誰が着付けたのだよ…。
二度目のため息を吐き当たりを部屋には男と女の独特の匂いが漂っていた。
……………。
換気しなきゃ…。
私の部屋は城の奥にある。
日当りは良好で大谷様が気を遣ってくれたのか、他の人が通らないようになっていた。
引戸を全開にし、私は縁側に座り外をぼんやり見つめる。
「どうしよう…」
彼の熱が、顔が、声が…。彼の事を思い出すと私の身体が反応する。
自分の指先を唇へと押し当てる。
彼の温もりが残っているか確かめるように、自分自身を抱きしめた。
「きよ…おき…」
小さく彼の名前を呟く。
まだ、教えて貰っていない彼の名前。それだけで甘く、痺れる様な感覚に包まれる。
きっかけはともあれ、たった一度互いの熱を感じあっただけなのにこうも簡単に傾くだなんて。
良く考えてみたら彼はBASARAのキャラ。
ずっと言ってた筈だ。"絶対に帰る"って。
だけど…
「だけど…」
私、貴方の事…。
もっと、貴方の事が…
この時、私の呟きを誰かが聞いていたなんて思いもしなかった。