第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
我は濡れた着物を干してやると名前の隣に腰を下ろす。
雨は止みそうになく、暫くお互いに無言で雨を眺めた。
先程まで濡れた物を纏っていたので我の身体は冷え切ってしまい、数回くしゃみをする。
流石に厳しい、と思っていると突然ふわり、と何かに包まれ暖かくなった。
「元就様…」
私は元就様に布を掛ける。
もちろん一枚の布に二人で。
「こっち、向かないで下さいね」
私は物凄い事をしているのであろう。
もう、心臓の音がうるさい。
顔も真っ赤だ。
元就様様の肌が触れているわで頭の中はぐちゃぐちゃだ。
ちらっと元就様の様子を伺うと元就様も真っ赤になっていて固まっていた。
暫く無言で居ると元就様が口を開く。
「…そなたが攫われたと聞いた時、我は我を忘れた」
我は城も、身分も、何もかも。
名前の所へ行かなくては、とそれしか考えていなかった。我は安芸が、毛利家が安泰なのであればそれで良いと思っていた。
だが、そなたと出逢い変わった。人を愛するとこのようにも幸せに充ちる。
「我は名前を愛している」
"我は名前を愛している"
元就様の熱を帯びた声で何度も頭の中で囁き続ける。
「わ、わたしはっ」
私は言葉を繋げようとすると元就様は唇で言葉を塞いだ。
「んんっ」
私は一瞬何をされたか分からなかった。
「返事など、要らぬ」
我が想っていればいい事よ、と角度を変えながら口付けを落として行く。
「わ、わたし、こんな…、んっ、流されちゃ…う」
必死に元就様に伝えようとしたが、口付けをされていて上手く伝えられなかった。
「流されていて良い…我がそなたを愛していれば、それで…」
「もと…なりさ…ま」
重なる唇、絡むお互いの舌。逃げれば追いかける。
雨が降り続く中、聴こえるのは二人の甘い吐息だけ…。