第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【陸】
俺様と名前ちゃんが甲斐に着いたのは虎の刻を過ぎた頃だった。
辺りは大分明るくなり早い者は起きている時刻。
とりあえず俺様は起きていた者に客間に布団を敷いてと頼み、そこに名前ちゃんを寝かせた。
アレから名前ちゃんは一度も起きていない。
俺様は死んだように眠る彼女を見詰めながらあの事を考える。
俺様とかすがは忍だ。
普通の人間より鼻は効く。
かすがに言われて気付いたのだけど、あの時彼女からあの甘い話の様な匂いはしなかった。
「んー、バサラに目覚めたのと関係あるのかねぇ」
彼女の頬にかかる翡翠の髪を流してやる。
初めて彼女と逢った時は長くて綺麗だったのに。
今でも十分綺麗なんだけど。
そう思いながら彼女の前髪をかき上げ露になった額に唇を落とす。
「っッ!」
俺様は何をやっているんだ…。
じわりと唇に熱が帯びる。
もう彼女からはあの匂いはしてなかった。
だから引き寄せられた訳でもない。
それに、最初はあの匂いにやられたけど " 堕ちた " 訳でもなかった。
可愛いし、良い身体に良い反応。
俺様の性処理に丁度良いと、そんな感じだった。
だから初めて逢った時に俺様は言った。
" また、相手して "
まぁ、それは凶王さんやら軍師さんやらで叶わなかったのだけれど。
あの時、彼女の目には俺様はどう映ったのだろう。
あの時から俺様は彼女が気になって仕方なかった。
気付いた時には遅かったけど…
俺様は…
" 彼女に嫌われたくない "
ホント、遅いよね。
" ヌシはまだ、囚われていない "
大谷の旦那は俺様にこう言っていたけどさ…
十分囚われてるじゃないの。