第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
私はふらつきながら半兵衛様に近寄り " わたし" を求めていた手を握りしめ自分の頬に宛てがう。
「ねぇ、" わたし" を…妻にしてくれるんじゃなかったの…?」
" わたし" を絶え間なく愛してくれた貴方…。
「ねぇ、" わたし" も、大好きだったんだよ?」
そんな貴方を絶え間なく愛した" わたし "
「ねぇ、目を、開けてよ…」
私の中の " わたし " が何度も、何度も貴方を呼ぶ。
「幸せに、してくれるってっ!!」
でも、それはもう届かない想い…。
「っあぁぁぁぁぁっッ!!!!」
多くを語れなかった半兵衛様はそのまま三成様の腕の中で眠るように息絶えた。
もっと、もっと三成様に言いたい事、伝えたい事があった筈だ。
なのに半兵衛様の刻は待ってはくれず、永遠の別れとなってしまった。
「ごめっ…んなさい…半兵衛様っ!」
一つ、二つと半兵衛様の顔に水滴が落ちる。
それは私と三成様の涙なのか、それとも何時の間にか降り出した雨なのか、そんな事はもうどうでも良くて…。
私は変わらなかったこの運命を、三成様は半兵衛様の死を、それぞれの想いで嘆き、哀しむ。
そして、降り出した雨が血に濡れたこの地を洗い流してくれていた。
だけど、私達の哀しみはそう簡単には綺麗にならなくて…。
私も…
「…好き、でした…」
重治さん…。
私が初めて呟いた言葉達は雨と共に流れ去って行った。
こうして " わたし " の永い、永い初恋は幕を閉じた…。
やっと、死んだか。
第三章・ひらり、ひらりと久遠の破片 終幕