第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「竹中…半兵衛っ!どこまで奪えば満足なんだッ!?」
信じたくない、認めない。
だが、今こうして絶対に刃を交える事のない半兵衛様と対峙していると言う事実。
それはどうやってもねじ曲げることが出来なかった。
半兵衛様の刀が私に真実を刻み込む。
それでも、心の何処かでこれは悪夢だ、目覚めぬ午睡だ…そう思い込んでいる自分が居た。
「奪う?一体何の話だい?」
流石は半兵衛様。
私の攻撃の間を熟知しており、容易く避けて行く。
「此処に来てまだ白を切るつもりか!」
未だ理解出来ない私に対して、更に煽るような言い方で挑発する。
私が半兵衛様に叶う訳がない、なのに私の頭の中は半兵衛様と家康の離反の怒りで解ける筈の糸が余計絡まり、半兵衛様の真が見出せないでいた。
そして、私は半兵衛様の挑発に見事に乗せられて行った。
「秀吉かい?それとも、彼女の事かい?」
彼女…つまりは名前の事だ。
違う!#名前#は…名前の事はっ!!
「っ…!!」
半兵衛様の口から名前の名が出ると私の攻撃は隙だらけになり、それを半兵衛様が見逃す訳もなく鋭く得物が走る。
「フフッ…隙だらけだ。あぁ、アレは良い女だ。僕が尽くした甲斐があったよ」
なん…だと…?
「身体を欲すれば、簡単に委ねる」
止めろ…
「三成君も…」
それ以上は…!
「彼女の中は気持ち良かっただろう?」
「貴様!!姫を…名前を穢すのかッ!」
ギリギリと互いの得物同士が重なり合い、競り合う。
「フフッ…事実を言ったまでだ。それに…」
そう言うと半兵衛様は力を抜いた。
「っしまった…!」
その力の余韻で私は前のめりになり、翻され私は背後を取られた。
「彼女を穢したのは」
三成君…君の方ではないのかい?
そう言うと半兵衛様は一回、二回と私の背を切り刻んで行く。
「くっ…!!」
「君の醜い嫉妬で彼との中を引き裂いたり、なかなか楽しめる話を聞いたよ」
言うな、言うなっ!!
「終いには、彼女の記憶が退行したきっかけと、同じ事をしたのだからね」
おのれっ!おのれぇっっ!!
「それに…たかが女一人の為に、折角任された城も容易く敵の侵入を許してしまうなど、言語道断…!」
その言葉と同時に半兵衛様の刀が私の背を貫いた。