第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【forty-eighth.】
左近がやられた、か…。
ヒーッヒッヒッ…。
何、これは想定内よ、ソウテイナイ。
勝てる、などと思ってはいない。
だが、今の戦いの中で絡まっていた糸が解けた事は収穫よ。
どれ、次はワレの番。
さっさと終わらさなければナァ。
ヒナギクの事も、そして三成の事もまた然り。
久方ぶり、と友人に挨拶をするように賢人はワレの前に参るとそのまま言葉を連なった。
「君は…あの事を知っていた。そうだろう?大谷君」
自身の得物を手のひらに数回宛がい、ワレに確認する様に問う。
「はて、あの事とはどの事であろか…」
ワレは端に居る左近をちらりと見遣ると首を傾げていた。
おそらくは " あの " 事で間違いはない。
ヤレ、賢人も左近が居る前で話さなくても良いこと。ましては自分が不利となる事柄ではなかろうか。
ワレはそんな事を思いながら視線を戻すと賢人はゆるりと首を横に振った。
「もう…惚けなくて良いんだ。そして…それがある日を境に止まっていた事も…」
ヒッ…。そうか…やはりそうだったか。
ワレはてっきり治りよったかと思っていたのだがナァ。
「ヒッ…賢人も人が悪い」
ワレはため息と共に呟くと賢人は指を口元に置き微笑む。
「フフッ…三成君らが知ったら付き纏われて身動きが取れなくなるからね」
豊臣の人間は、皆…あたたかい…。
そう言った賢人は憂いるように空を見つめる。
「話を戻すと賢人のソレは、ヒナギクと関係がおありか?」
そうよ、ある日とはヒナギクの噂が舞い込む少し前、否…もっと前だったか…。
その頃であろう、賢人から" ソレ " がなくなった。
「ご名答。流石だね」
賢人は嬉しそうに答える。
そして " あぁ、そうだった " と、突然ワレから左近へと向き直り、左近に話しかけた。
「左近君、君に頼みがあるんだ」
命令、ではなく、僕の頼みだ。
左近は賢人の頼みを聞くとすぐさまこの場所から離れた。
左近が居なくなったのを確認すると賢人はワレに向き、言葉を綴る。