第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
三成様が大阪城へ名前様を迎えに行く時、俺はお預けを食らった。
正直な所、俺も三成様と共に名前様を迎えに行きたかったのだが、如何せん三成様の鋭い視線がガチで怖かったので渋々だが諦めざる得なかった。
前回の事もあり、三成様は数百の兵を引き連れ大阪城へ向かう。
俺は共には行けなかったが、城を守ると言う重大な命を授かったのでまぁ、良しとしよう。
三成様が大阪城へ着く頃、俺宛に文が届き、差出人を見れば勿論三成様であり、俺は三成様と名前様に何かあったのではと急ぎ内容を確認をする。
「み、三成様…」
文を持つ手が震える。
内容はこうだ。
" 名前様に一寸たりとも近付くな。近付けば貴様を即刻切り刻む。"
…あぁ、きっと目が疲れているんだ…。
これは疲れ目だ。
決して涙等ではないと霞む目を抑え必死に自分に言い聞かせるも、後から絶え間なく流れる液体が物語っていた。
それから何とか立ち直り、暫くすると、三成様と名前様がお戻りになられた。
久方振りに見る彼女は髪も短くなり、雰囲気が幼くなったかのように思えた。
何があったかはそれなりに聞いていたが、こうも変わってしまうと何だか悲しくもある。
名前は名前なのに…。
いつの間にか本当の姫様になっているし、三成様の命で近付くなと言われているし…。
こんなに近くに居るのに、手を伸ばせば触れられるのに…。
なぁ、名前…。
あの時、俺に抗う力があったら…
何時までも…。
なんて、名前を思うと女々しくなって仕方無い。