第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
空は繋がっている。
それは当たり前の事。
だけど、今はどうだろう。
此処は戦国の世、しかもバサラの世界に来てしまった訳で、果たして空は繋がっていると言い切れるのだろうか。
彼に何者かと問われた私は、応えることが出来ずにいた。
暫く無言でいると彼は私の手を掴み、まるで着いて来いと言う様に私を引いた。
「…っ!?」
だけど、彼の力が意外と強く、しかも足下はアスファルトでも土でもない柔らかい砂浜。
オマケに私はヒールの高いパンプスな訳で足が縺れるのは極自然な事。
倒れると思った瞬間、私は次の衝撃に備え目をぎゅっと瞑った。
まぁ、倒れた所で下は砂だ。
衝撃もそんな無いし、ただ砂塗れになるだけだから良いか。
なんてそんな事を思っているのだけれど、いくら待っても砂の感覚がしない。
その代わりに、身体を固定する感覚と良い匂いと淡い温もりが私を包み込む。
「大丈夫か…」
そして聞こえて来た声はどうしようもないくらい優しい声色。
やだ、耳元で囁かないでよ…って、もしかしてこの状況って…
私は恐る恐る顔を声がした方へ向けると彼の顔が目の前に。
「っ…!」
え、何?
この温もりは?
この良い匂いは?
どうして私は彼の上に覆いかぶさっているの…?
そう理解するのに時間はかからなかった。
見た目は細い彼だけど、抱きとめた腕はやはり男の人で意識してしまう。
どうしよう…。
尋常じゃないくらいに熱い…。
彼の手が回されている肩が、腰が沸騰した様に熱を帯びている。
きっと、顔も茹で蛸の様に真っ赤になっているに違いない。
「…其方の、名は何と申すのだ…」
うっとりとするくらい美人な貴方。
どうしてそんな目で私を見るの?
どうしてそんな声で話しかけるの?
余りにも元就様が艶っぽく話すものだから簡単に名前を名乗ってしまった私は、
どうしようもない馬鹿だ。