第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
そう、言いたかった。
だが、その言葉が出なかった。
背中に押し当てられた柔らかい感触と温もり。
夜着へと着替え、その身は布一枚になり、彼女の膨らみと熱がそのまま伝わる。
「っな!」
何を考えているのか、そう言おうと彼女に向き直り、彼女の表情を見ると何も言えなくなった。
瞳は潤み、顔は真っ赤。
まるで何かを決心した様な感じだ。
「わ、わたし…!」
もう一度、僕は君に触れて良いんだね…。
もう、先程の様に、怯えても、止めろと何を言っても、僕は止めない…
「そのつもりで、来たんだね…」
声が震える。
僕らしくもない。
君は僕を狂わせる。
甘い、甘い、毒の果実。
昔、君が話してくれた物語。
僕はその毒の果実を食べる姫にでもなった気分だよ…。
彼女は静かに頷いた。