第18章 くりすますをあなたと(三成)
「さぁ、着きましたよ」
『ここ…なの?』
そこは、人気も少ない丘の上だった。
日も落ちかけたその場所は、何かがあるとは思えない。
「もうすぐ、日が沈みますね」
『うん…真っ暗になっちゃうんじゃ…』
「あっ!」
急に三成が驚きの声を上げる。
「ほら、愛様!」
『どうしたの?……えっ?!』
何もないはずだったその場所で、一本の木がほんのり光り出していた。
「もっと近くに参りましょう」
三成は愛の手を握りなおし、
昼間佐助と飾りをつけていた木に近寄る。
『すごい…』
日が落ちるに連れて、その木は煌めきを増し、
それは現代でいうクリスマスツリーそのものだった。
愛は声も出せずにそのクリスマスツリーを見上げている。
目にはうっすら涙さえ浮かんだ。
『凄い…三成くん…
私、この時代でクリスマスツリーが見られるなんて…しかもイルミネーション…
ずっと見たかったの。大好きな人と二人で、こういうの…』
感動が押し寄せてきて、上手く話せない。
それでも目の前のクリスマスツリーが、三成の手によるものだという事はわかっている。
暗闇に光る大きなクリスマスツリーのふもとに二人は立った。
『あっ…三成くん…雪が…』
あつらえたようなタイミングで降り出した雪が、二人を包む。
「愛様、寒くありませんか?」
そう言うと三成は愛の後ろからそっと身体を包み込んだ。
『ううん。凄くあったかい…。
三成くんの体温も、このクリスマスツリーも…』
そう言うと、回された腕をギュッと抱きしめる。
「愛様、こちらを向いてください」
腕の中の愛をクルッと自分に向ける。
「どうしてでしょう…今とても貴女に口づけがしたいのです。
良く、お顔を見せて下さいますか…」
そう言うと、愛の顔を自分に向けさせそっと触れるだけの口づけを落とす。
『んっ…』
「もしかして、佐助殿が言っていたのはこう言う意味なのでしょうか…」
そう呟くと、もう一度口付けを落とす。
触れるだけのそれは、徐々に深さを増していった。