第18章 くりすますをあなたと(三成)
『三成くん!迎えにきてくれたの?』
二人の距離が近づけば、お互いが我慢できないように駆け出した。
「えぇ。もうすぐ日も暮れますからね。
愛様、寒くありませんか?」
そう言いながら、手にしていた羽織をフワリと掛けた。
『ありがとう。持ってきてくれたんだ』
そういう愛の笑顔は、照れたようにフニャフニャと綻んでいた。
「おい、俺の存在を無いものにするな」
少し不貞腐れたように政宗が言う。
「政宗様、愛様を送ってくださりありがとうございます」
何事も無かったように三成が礼を言う。
「無理矢理引っ張っていったからな。ほら、これ愛の荷物だ」
そう言うと、風呂敷の包みを三成に手渡す。
『政宗、今日はありがとう。
ちゃんと、お礼するからね』
「別に礼ならもう貰った。
それより、しっかりやれよ、くりすます」
そう言うと、手をヒラヒラと振って踵を返す。
「お礼?なにか差し上げたのですか?」
『うーん。もしかしたらケーキのことかな?』
「けーき?」
『あ、何でもない!帰ろう、三成くん』
「えぇ帰りましょう」
そう言うと、自然に愛の手を取る。
愛はその手にキュっと力を込めた。
「愛様、お願いがあるのです」
そう切り出した三成の顔は少し緊張しているようだった。
『お願い?私に出来る事なら…』
そう言うと愛は少し心配そうな顔になる。
「愛様の《くりすます》を私に頂けませんか?」
『えっ?』
想像もしてなかった言葉に、愛は言葉を失う。
「愛様と、恋人同士の《くりすます》を過ごしたいのです。
駄目…ですか?」
今度は三成の方が不安な顔をする。
『ううん!ちょっビックリしちゃっただけ!
ていうか、私が三成くんにお願いしようとしてたんだよ、それ』
そう言うと、愛の顔が赤く染まる。
「ありがとうございます。
早く帰りましょう。貴女のそんな可愛い顔、
私以外の男に見られるのは耐えられませんから…」