第16章 織物のように(三成)
政宗のいつもの行動なので気にも止めていなかった。
(もしかして…ヤキモチ妬いてくれたのかな?)
「政宗も秀吉さんも、すぐに私の事子供扱いするんだから…」
ニヤけそうになるのをごまかすために、
わざと膨れたような顔をしてみせる。
『そうでしょうか…。
私には、お二人とも愛様を、一人の女性として見てるように思えます』
思いがけない三成の言葉に、かき混ぜていた手が止まる。
「え?そんな事ないと…思うけど…」
困ったような愛の顔に、
三成は慌てて言葉を続けた。
『すみませんっ。愛様の事となると、
寛大な心が持てなくなってしまうようで…』
申し訳なさそうな三成の言葉に、
ついに言葉が溢れる。
「三成くん…もしかして…ヤキモチ?」
言ってしまってから恥ずかしくなる。
「な、わけないよね!忘れて!そんなに自惚れてないです…」
言葉尻を弱めて言う愛の頭を、そっと三成が撫でる。
『そう…ですね。多分盛大にヤキモチです。
自分でもびっくりしてしまいますが…。でも、できる事なら、
貴女を誰にも触れさせたくないです』
手つきは優しいのに、顔が真剣な三成に、
愛はつい吹き出してしまう。
「ふっ…」
『呆れてしまいましたか?』
三成は少しうなだれてしまったようだった。
「そんな事ないよ。嬉しいな…って思っただけ」
『嬉しい…のですか?』
三成は愛の言葉に目を見張った。
「そりゃそうだよ!大好きな人に嫉妬されて、
嬉しくないわけないでしょ?
でも、こうやって触れられて、ドキドキするのは三成くんだけだから…」
三成はその言葉に心底安心したように息を吐く。
『良かった…。でも、あんまり無防備に触れさせないで下さいね?』
「うん。気をつけるね。
さぁ、出来たから食べて出かけよう?」
ホクホクと湯気のたったぜんざいをお盆に乗せると、
二人は仲良く台所を後にした。