第16章 織物のように(三成)
じっと考え込んでしまった三成に、
愛はあわてて声をかける。
「み、三成くんは、私に色々教えてくれてるじゃない!
算術も、乗馬も、戦のことも」
『え?』
三成は目を見張りながら愛の言葉に耳を傾ける。
「私は、着物を作ってあげたいんじゃなくて、それを作ったことで、
三成くんの喜ぶ顔がみたいの。
私は、三成くんが色んなこと教えてくれる事が、本当に嬉しいんだよ!
目に見えないもの、沢山もらってるから…ありがとう」
そう言って、今度は愛から三成の両手を握った。
『そうですか。それなら良かったです。
これからも、私に分かる事なら、何なりと聞いてください。
一番に…ですよ?』
「もちろん!お願いします。
さて、お腹すいちゃったよね。昨日のお団子、変身させてくるから、
少し待っててくれる?」
三成は、愛の言葉に少しだけ考えるような顔をすると、
『待ってるのは寂しいので、私も台所へ伺って宜しいですか?』
と、顔を輝かせる。
「いいけど…どうしたの?」
『貴女の料理しているところを、一番近くで見たいのです』
屈託もなく言いのける三成に愛は頷くしかなかった。
『へぇ、このお団子は一晩経っても硬くならないのですね』
愛が餡子をゆっくりとかしている隣で、
三成はプニプニと団子を突っついていた。
「そうなの。凄いよね。
料理は一手間かけるだけで、全然違うんだって」
その言葉に三成がピクッと反応する。
『政宗様のお言葉ですか?』
その声色が、少し硬いように聞こえて愛が三成を振り返る。
「三成くん?」
愛に呼ばれて、ハッと我に帰ると、
三成は申し訳なさそうな顔をする。
『すみません…。
先日、此方で楽しそうに政宗様とお料理なさっているのを見かけたので…』
「あの時、見てたの?声かけてくれれば良かったのに」
『そうなんですが…愛様が頭を撫でられているのを見て、
声をかけそびれてしまいました…』