第84章 ジャックダニエル
「ははっ、嫌うなんて有り得ませんねぇ。あるじは俺を"死んでも返さない"のでしょう?」
「うん、私のはせべ…好きだよ。」
「はい、俺もですよ。俺の中には主しか居ません。あぁ‥そうですね。では、あいつに解ってもらう為に、いつもの様にしてみてもらえませんか?」
…いつも?
前に、僕と一日出掛けた時にしてくれたあれって事かな?
あの時を思い出すと、自分の中のどろどろした部分が溢れそうになるんだ。舌を吸い上げたあの時のちゃんの顔が浮かぶ。
「……ちゃん。」
「光忠、ごめんね…見てて?」
長谷部君の肩に手を置き、耳元へ顔を寄せ小さく囁いて口付ける。
「私のはせべ、愛してる‥」
聞いた事の無い、その優しく甘い声が、胸の奥をちくりと痛ませた。