第93章 白妙
「……白妙、だろうな。開花時期は四月中旬から五月上旬とあった。白い花を探していた時に見た物と似ている。」
「しろたえ?‥そっか、長谷部君なら解るんじゃないかなって話してたんだ。」
そっか、白妙君っていう名前なんだ、可愛いね。そう後ろで呟く燭台切の元を出て、一直線に桜の下を目指した。さっき桜を見た時には無かった水筒、これを置いたのはきっと主だ。
置いてあった水筒を手に取り、辺りを見回す。これといって変わった物は…
「‥ん?あんな所に手摺り?」
遠目には気付かなかった手刷りが、桜の後ろ辺りから堀の下へ斜めに伸びている。
「階段があったんだな。ここから下へ降りられるのか?……あ。」
「ん?…あ!長谷部!みーつけたっ!」
手刷りから下を覗くと、二畳半程の開けた場所に長椅子が二脚並び、そこに探していた人物が膝を抱えて座っていた。