第93章 白妙
「主はこちらへ帰られてから、本当に柔らかく嬉しそうに笑う様になられましたね。」
道を知っている燭台切達を先頭に、暗くなった町へ出て行く本丸の者を見ながら呟く。
「そうかなぁ?」
「ええ、余りに嬉しそうに笑われるものですから、本丸の者も見蕩れていましたよ?主の笑顔は皆を惹き付ける。」
長谷部とか?と、俺を覗き込む主の頭を撫でる。俺のは今更始まった事ではないと解っているだろうに、わざとこう言うんだ。
「ふふ、そうですね。俺以外だと、燭台切や青江、三日月‥山姥切や乱も嬉しそうでしたね。」
本当なら誰にも見せたくはないんですよ、とは言わない。主自ら鍛刀された刀は主を特別に想いやすいと聞いたが、俺や大倶利伽羅の様に自分で決めた者もいる。
その様に皆を惹き付ける貴女を、本当ならば隠してしまいたいくらいなんですよ。