第92章 夜桜
こっちこっち、と主ちゃんの手を引いて厨の入り口に立つ。
「凄いから、絶対びっくりするよ。」
「そんなに凄いのかい?」
こくこくと頷いた信濃君が、しゃがみ込んでこっそりと中を覗く。それに習う様に、つい僕達までこっそりと部屋の中に目をやった。
「ふぅ〜!!兄貴、格好良いよ!」
「……雅な太郎太刀はどこへ行ったんだい?」
「カッカッカ!これも修行の賜物!」
「兄弟、それは少し違うぞ。」
空中を舞う緑の物体。そして、髪を靡かせながらいきいきと中華鍋を軽々と振るう太郎さんの後ろ姿が見える。
爆笑する鶴さんと次郎さんに、険しい顔で黙り込む歌仙さん、複雑そうな顔の山姥切君に、なぜか尊敬の眼差しを送る小夜君。顔は見えないけど声を聞く限り、堀川君と山伏さんはいつも通りにこにこ笑いながら流してる感じかなぁ?