第92章 夜桜
ぐるっと本丸を回り、浴場の脇にある裏口から外へ出る。
「皆に話したらどうするの?」
「そうだなぁ‥僕も思い付きで言っちゃったから良くなかったんだけど、一回見に行く事出来ないかな?」
「場所があるか見るって事??」
「そう。あまり本丸を空けるわけにもいかないし、そんなに長く居るつもりはないけどさ、皆で見たいから広い場所があれば良いなって…ごめんね、主ちゃん。」
君が喜ぶかなって思ってさ。
主ちゃんが一番良い笑顔をするのは本丸の皆と居る時だ。君が逃げ出した現世でも、良い思い出が作れたら素敵だから、とは思ったけど無茶ぶりし過ぎちゃったよね。
「大丈夫だよ、皆に連絡終わったらササッと見てこようか?」
「ああ、よろしく。」
祈祷場の前まで連なる飛び石を、ぴょんと跳ね終えた主ちゃんが扉に手を掛ける。