第92章 夜桜
離れへ続く渡り廊下を進み、茶室の扉に手を掛けると中から話し声が聞こえる。
「あ、誰か居るね。」
こくん、と頷いた主ちゃんが、一言掛けて扉を開く。
「ん?誰かと思えば主か、戻ったんだな。」
「ぬしさま!戻られたのですね、また髪を梳いて下さい。」
「ただいま!三日月、小狐丸。鶯丸も元気だった?‥あ、髭切と膝丸も居たんだね。」
お茶を飲む三条の二人に、獅子王君に鶯丸さん。そして、縁側で庭を眺める源氏兄弟が居た。
「おっ?お帰りっ!」
「久しぶりに戻ってきたな、茶でも飲むか?」
「母屋の方が賑やかだと思ったら、帰ってきてたんだね。」
「‥そうか、帰ったのか。」
傍に来た小狐丸さんが主ちゃんの手を引き、三日月さんの隣で膝に乗せて座った。