第89章 夢路
「ひゃっ!?」
突然、ぐるんと俺の腹の上へうつ伏せになった状態になり、驚いて声を出す。そんなこいつの口を手で塞ぐ。
「…あいつ等が起きるぞ?」
ぐっと、口角に力が入ったのが押さえた掌に感じられる。
「俺は、あんたが思う程優しく無い。…ただ欲しいだけだ。」
の事が。
そう言って、口を押さえていた手で後頭部を掴み引き寄せる。
びくりと身体が強張ったが、逃がさない。もう片方の手を腰に回し、自分と目の前にあるこいつの額をくっ付ける。
「……良く聞け、俺はあんたが好きだ。欲しい。だからこうしているのも気に掛けるのも、全部俺の為だ。‥あんたの為なんかじゃない。」
ぎゅっと閉じていた目が開き、その奥が揺らめいた気がする。胸にあったこいつの両手が俺の頬を撫でる。