第87章 国宝指定記念日
宴会の始まった本丸を見て満足そうに笑うと、振り返った大将が長谷部と俺を見る。
「二人とも、おめでとう!」
「主っ…ありがとうございます。本当に驚きましたよ‥」
「長谷部だけじゃなかったのか!‥まさか俺まで祝ってもらえると思ってなかったぜ。ありがとな、大将!」
驚きだろ?と、鶴丸の旦那の真似をした大将が、机の引き出しから何かを取り出す。
「おぉ、綺麗に出来てるじゃないか!きみ、毎晩頑張ってたもんな!」
「羨ましいですな。良かったですね、長谷部殿、薬研。」
「これ。大急ぎで作ったから、ちょっと不格好だけど…」
長谷部には、五瓜に唐花をアレンジした模様を、光沢のある灰桜色の糸で甲の部分に刺繍した白い手袋。
俺には、前に頼んでいたケセラストーンの腕輪だ。黒、肌色、青、深緑の独特な模様の石が映える。
凄いな、本当に数日で作っちまった。