第10章 天空闘技場
ずっと黙ったままのキルと闘技場に移動した。周りの観客の賑わい方は、耳がつんざくほどだ。
「もうすぐ始まるね」
「……」
話しかけてもこんな感じ。私はため息をついた。私が悪いんだけどね。
あんなふうにキルが思ってただなんて、想像がつかなかった。キルのなかの私の立ち位置なんて、大したことないと思ってたから。
「……………」
キルには悪いけど、今私はとても嬉しい。嬉しすぎて、周りの目を気にせず抱きしめたいくらいに心が踊っている。それに………
「なにしてるの?」
ゾクッ。私は目を強く瞑った。……なんで今あれを思い出すんだか…
「キルとの過剰な接触は、禁じられているだろ?」
呪いを受けてから初めてキルに会えた時。やっと歩き始めたキルに歩み寄ろうとしたときに、イル兄から言われたのだ。
「お前は呪われているんだから、キルに呪いを移すかもしれないだろ」
それからだった。周りが変わったと気づいたのは。
父様は家を空けることが多くなった。母様は私をキルに近づけさせないようになった。お爺様は私の力に警戒するようになった。イル兄は私を遠ざけるようになった。ミル兄は蔑むような目で私を見てくるようになった。使用人たちは知らないとは言っても、やはり嫌でも察するのだろう。扱いが変わっていくのが分かった。
「……………」
正直言って、私は怖いのだ。キルやカイトはアレのことは知らない。だからこそ、私なんかを姉だと慕ってくれるのだ。だからこそ、私はアレのことを知られるわけにはいかないのだ。キルにもゴンにも……絶対に。