第10章 天空闘技場
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「ちっ」
オレはイライラしながら、舌打ちをした。先ほどの光景が、頭に浮かぶ。カストロが姉貴を口説いていたあの場面だ。
「変な人だったね」
隣では姉貴が、そんなことを言うので、オレはさらにイラついた。
「…姉貴は、危機感が無さすぎるんだよ」
それは思わず声に出してしうほどのイラつきだった。自分でもここまで感情が揺らぐとは思わず、少し驚いた。
「ん?」
姉貴はきょとんとした顔でオレを見る。俺の我慢の糸がプツンと切れた。
「キル? どうしてそんなに怒って………っ!?」
バンッ。オレは姉貴を物陰に連れていき、思いっきり壁に押し付けた。さらに逃げられないように、両手で逃げ道を塞ぐ。姉貴は驚いた様子で俺を見た。
「………ヒソカのときも……ああやって許したのかよ」
「……え?」
自分でもおかしいと分かっている。だが、どうしても抑えきれなかった。言葉がどんどん溢れて、止まらない。
「ヒソカは別に………」
「じゃあ、この一ヶ月なにしてたんだよ!!!!」
自分でも驚くような声だった。姉貴はもっと驚いているだろう。オレは姉貴の顔を見れずに、床を見ながら言葉を続けた。
「ヒソカとどんな関係なんだよ。試験のときからそうだったじゃねぇか。三次も四次もヒソカと行動してたし、ここに来てからだってそうだ。200階に来た時だって、姉貴はヒソカと一緒にいることを選んだし…」
姉貴が戸惑っているのが、嫌でも分かった。その様子にまたオレは惨めになるのだ。
「なんでいわないんだよ。話せよ。二人で何……秘密を持ってるんだよ」
よりにもよって、ヒソカと。あの変態と。その秘密を考えただけで、身がよじれそうな思いがする。