第10章 天空闘技場
「なぜ自分の名前を、と言いたそうだね」
私の心を読んだかのようにカストロは言った。私は頷く。
「簡単な話、キミのお兄さんに聞いたんだ」
私はハッとして、キルと顔を見合わせた。まさか…カストロとイル兄が知り合いだったなんて!?ん?でも………。キルは途端に警戒態勢に入ったが、私は首を傾げていた。
「ははは。そう怖い顔をしないでくれたまえ。まぁ、対戦する相手にそう言われても、安心できないのは分かるがね」
ほら、やっぱりおかしい。私は落ち着いて、カストロに尋ねた。
「…そ、その兄って……まさか………」
「私の対戦相手、ヒソカだよ。キミのことを自慢げに話しててね。驚いたよ。兄妹の割には似てないんだね」
どちらかと言うと、キルアくんの方が似てる気がするよというカストロ。キルを見ると、げんなりとした顔をした。
「………あ、えっと………」
どうしてそうなったのか、私は誤解を解こうとしたが、カストロは話を続けた。
「わざわざ敵地観察に来るなんて、兄思いなんだね。綺麗な顔にあった綺麗な心の持ち主だ。あいつがゾッコンになるのも分かる。私もキミみたいな妹が欲しかったよ。まぁ、私は1人っ子なんだがね」
「あー…えっと…」
不意にキルから肘でつつかれた。そのままにしておいた方が、話が進むと思ったのだろう。私は口を閉じた。
「あぁ、目は綺麗な群青色なんだね。やはり兄貴とは違うな」
ずいっと、カストロが顔を近づけてきたので、私は少しうんざりとしていた。私よりキルと話してほしい。
「…キミは綺麗だ。良かったら、今度食事でも………」
カストロの手が私の顔へと伸びていく。私はそろそろキルへと話を向けようとしたが、
「おっさん!!」
その前に、これまたずいっと私とカストロの間に入ってきたキル。
「聞きたいことあんだけど。さっきのどうやったの?」
さっきの……って、あぁ。カストロが私達の背後に回ったあれか。
「残念ながら教えられないな。いずれ君とも戦うかもしれないしね」
だが、そういう割には偉く自信あり気な様子のカストロ。
「ははは、答えは試合でお見せするよ………あ、サインだっけ?」
「いや、やっぱいいよ。色紙持ってくんの忘れたし。んじゃね」
キルは私の手を取り歩き出した。