第5章 glass heart【赤葦京治】
静かに離れていく唇。
目の当たりにした彼の瞳は…
悲しそうに揺れていた。
「ほんっと鈍感、無神経…」
「ツ…、キ…」
「汐里の気持ちなら誰よりわかるよ。
…僕だって、同じだし」
「…っ…、」
一体、いつから…?
ツッキーの家で雨宿りさせてくれた、あの時は?
赤葦さんとデートするって浮かれてた、夏の日は…?
先輩を紹介したいって持ち掛けた、カフェでの夜は?
あなたは一体…
どんな気持ちで、私の話を聞いていたの…?
「始めから知ってた…赤葦さんしか見えてないのは。
それでも汐里を好きになっちゃったんだから…
ほんと、どうしようもないよね、僕も…」
涙が止まらない。
ごめん…、
ごめんね、ツッキー…
私、あなたの気持ちに気づかずに、傷つけるようなこといっぱい言った…。
「泣かないでよ」
「…っ、だっ…てぇ…」
「キスしたことは、謝るから…」
「…ちが…う…」
涙の理由はキスじゃない。
正直キスされたことよりも、ツッキーの気持ちの方が衝撃的で…。
さっき言われたとおり、あまりにも鈍感で無神経だった私。
自己嫌悪で、もう、どうにかなりそう…。
「違うの?じゃあもう一回、キスしていい?」
細長い指先で、頬を撫でられる。
私の知らないツッキーが、ここにいる。
こんなに優しく触れられたことはない。
こんなに甘い声だって、初めて聞く。
痛いほど心に届く、ツッキーの気持ち…。
「…っ、…」
うまく声にならなくて、慌てて首を横に振り、意思表示した。
「わかってるよ。冗談だし」
「…こ、なとき…冗、談、いう…?」
「ん…まあ、半分本気だけどね」
「……」
何も言えない私…。
ツッキーの手が伸びて、そっと抱き締められる。
さっきは私の力じゃ抵抗なんて出来なかったけど、今度は違う。
拒絶したらきっとツッキーは離してくれる。
それくらい、優しい抱擁。
「汐里…」
「ん…?」
「好きだよ」
「……」
嘘…、みたい…
ツッキーが…甘い…。