第5章 glass heart【赤葦京治】
「ったく、いつまでウジウジしてんの?三回デートしたんでしょ、向こうからも誘われて。しかもその辺のチャラい男じゃなくって、相手は赤葦さん。もうそういうことじゃん」
「ツッキーはあの二人の姿を見てないから…。そんな単純じゃないよ」
「じゃあ何?赤葦さんが、歩くのもままならない元カノを一人にするような男だったら安心できたの?自信持てるわけ?」
「そんなこと言ってるんじゃない!ツッキーにはわかんないんだよ!好きな人の心が自分じゃない誰かに向けられてる気持ち!不安や嫉妬でどうにかなりそうな気持ちなんて、知らないでしょ!?」
遂には涙が滲んで、視界がぼやけてしまう。
息を飲んだみたいに、一瞬固まるツッキー。
その次に漏れ出たのは、堪えきれなくなったような静かな声だった。
「は…、それ、本気で言ってんの?」
酷く冷たく感じる声色。
瞳に留まっていた涙は、私の頬を濡らしていく。
ただならぬツッキーの様子に言葉を失ったところで、握られた手がギュッと締め付けられた。
「僕、今まさにその気持ち味わってるんだけど」
「……え?」
めいっぱい腕を引かれ、目の前のツッキーにぶつかりそうになるその直前。
私の体は、両腕で抱き止められた。
もう、何をされているのか頭が追い付かない。
気づいた時には、頬が大きな両手に挟まれ…
二人の唇が、重なっていた。
「んっ、や、ツ…っ」
体を押し返そうとするが、ビクともしない。
何度も唇を啄んで、小さく吸われ、舌が差し入れられる。
何、これ…
何でツッキーにキスされてるの…?
ツッキーが私にキスって…
まさか、そんなの…
嘘だよね…?
涙が次々溢れてくる。
決定的だったのは、さっきのツッキーの台詞。
このキスの意味を、理解してしまった―――。
「…、ふっ、」
唇の隙間から漏れる自分の声。
力なんて入らない私は、ツッキーにされるがまま。
最初強引だったキスは、いつの間にか優しい触れ方に変わっていた。
何度も唇をずらしながら、小さく啄まれる。
力づくで頬を捕らえていた手はゆっくりと離れ、慈しむように髪を撫でていく。
こんなのまるで…
恋人にするキスみたいだよ…。