第5章 glass heart【赤葦京治】
「何で泣きそうなの?」
ツッキーの手のひらが、私の頬に触れた。
顔に触れられるなんてこと初めてで、勝手に肩がビクンと揺れる。
思わず、一歩後退り。
ツッキーも一歩、こちらに歩み寄る。
結局私たちの距離は変わらない。
「ツッ…キー…、見られてる、から…」
通り過ぎる人の視線が、私たちに向けられていることがわかる。
意図せず強張ってしまう声が恥ずかしくて、まともに目なんて合わせられなくて…
また、うつむいた。
「人に見られない場所ならいいワケ?」
「な…、違うじゃん!そういうことじゃなくて…っ」
上擦る声を最後まで聞くことなく、長い腕が伸びてくる。
ツッキーの手のひらに、私の手が包み込まれた。
黙って夜道を進むツッキー。
私はただ、黙って後を付いていく。
なにこれ…
どうして私たち、手繋いでるの…?
何か変だよ、ツッキー…。
終始無言のままひたすら歩き、ある場所まで辿り着く。
春に二人で桜を見た公園だ。
あの頃はピンク色の花をつけていた木々。
今ではところどころ葉がついている程度で、何だか物悲しい。
街灯が届く公園内は、見渡してみても誰もいない。
ツッキーに手を引かれるままベンチに歩み寄り、並んで座る。
一向に離される気配のない、私の手。
明らかにいつもと様子の違うツッキー。
妙な緊張感が漂う中、やっとのことで隣から声が届いた。
「そんな思いするくらいなら、もうやめればいいのに」
「……」
「違う?」
いつもの意地悪で言っているわけじゃないって、わかる。
そうだよね、ツッキーでもそう思うよね…。
でも…だけど…
「だって…好きなんだもん…」
諦めようとしたことなんて、数えきれない。
自分の意思ではどうにもならないから、苦しいの…。
震える声で何とかそう言えば、今度は大きなため息が返ってきた。