第5章 glass heart【赤葦京治】
会うたびに好きな気持ちが大きくなっていく。
二人で会ったのは、花火大会に、水族館。
そして、今日。
赤葦さんからも誘ってくれたし、悪く思われていないことは確かだと思う。
これって、友達だから…なのかな。
テツさんだって私のこと食事や飲みに誘ったりするし、同じような感覚なのかもしれない。
でももしかしたら、少しでも私のこと恋愛対象として見てくれてる?…なんて。
そんな期待が胸の奥に潜んでいることも否定できない。
少し早い夕食を食べようということになり、駅ビルへ移動する。
一緒にいられてすごく嬉しいし、楽しい。
幸せでいっぱい。
だけど…食事が終わったら、さよならだよね?
指折り数えていた今日が段々終わりに近づいていくのが、もう寂しい。
今日お別れしたら、次はある?
こうしてゆっくり会えなくてもいい。
仕事の帰りに食事したり、飲みに行ったり。
そんな僅かな時間でもいいから、また会いたい。
私から誘っても、会ってくれるかな?
LINEとかしてもいい?
知りたいことがいっぱい。
直接聞くにはちょっと勇気がいるけど、勇気を出さなきゃいけない時だってある…よね。
食事が済んだら、聞いてみよう。
駅の中に入った私たちは、飲食店のフロアで店を選ぼうということになった。
でも、その前に…。
「ごめんなさい、ちょっとお手洗い行ってきます」
「うん」
食事中に席を立ちたくはないから、赤葦さんに待ってもらい、そばにある女性用トイレに向かう。
赤葦さん何か食べたいものあるかな?なんて考えつつドアを開けたすぐのところで、私は足を止めた。
女性が一人、うずくまっていたのだ。
「あの…大丈夫ですか?」
ゆっくりと顔を上げた、その人。
歳は同じくらい…?
ともかく、酷く顔色が悪い。額には僅かに冷や汗まで滲んでいる。
「大丈夫です…」
そう返しながらも、手の甲で額を一度拭う。
バッグを開き何かを探す仕草を見せるものの、どうやらそれは見つからないようだ。
あ、ハンカチかな…?
自分のバッグを開く。
一枚はさっき映画館のトイレで使ってしまったから…
もう一枚の方を、彼女に差し出した。
クリームイエローの布地。白いマーガレット模様のハンカチ。
毎日持ち歩いているのに結局使えずにいる、赤葦さんからのプレゼント。