第5章 glass heart【赤葦京治】
呼び掛けられてハッとする。
赤葦さんのメガネのせいで、トリップしてた…!!
「どうした?考え事?」
「いえ!ちょっと赤葦先生の…」
「 "先生" ?」
「わぁああっ!違うんですっ!」
「何が違うの?」
心なしか、メガネ越しの瞳は私を見て面白がっているような…。
ただでさえ見つめられるとドキドキしてしまうのに、今日はメガネ姿で更に威力は倍!
「汐里って顔に出やすいよね」
「え!?…どんな顔してました!?」
「何か楽しい妄想でもしてるような顔」
彼の頬は、今度は確実に綻んだ。
……ご名答。
やだ…絶対変な顔してたんだ、私…。
そう言えば、前にツッキーにも言われた。
私は考えていることが顔に出る、って。
「いえ、えっと、あー…赤葦さん、学校の先生っぽいなぁと思っただけです…」
かなりはしょってますが、嘘じゃありません…。
「それだけ?」
えぇ!?意外にも話を掘り下げようとしてくるよ!
「それだけ…、あ!そう!ツッキーみたいなメガネも似合いそうだなって」
ツッキーのこと思い出したついでに、そう付け加えてみる。
「ああいうフレームの厚いメガネも、お洒落な感じで似合いそう!」
「……そうかな?」
「はい…」
あれ…?何か変なこと言った?
一瞬、変な間があったような。
そんなことが頭を過る中、視界が暗くなっていく。
「あ、始まるね」
「はい」
真っ暗になった空間。
正面のスクリーンには、映画の予告編が流れ始めた。
約二時間。物語の世界を存分に堪能した。
ハッピーエンドの恋愛映画は好き。
紆余曲折あっても、最後は結ばれる二人に幸せな気持ちになれるから。
現実もそうだったらいいのにな。
片想いしてる全ての人が幸せになれたらいいのに。
物語の余韻に浸りながら、ふと考える。
私は楽しめたけど、赤葦さんはどうだったかな…。
エンドロールが終わり、ゆったりとライトが灯されるのを見計らってから隣を窺った。
「面白かったね」
「はい。赤葦さんも楽しめました?」
「うん。一人じゃこういう映画観ないし、新鮮で良かったよ」
内心ホッとする。
こんな風に言ってくれるところも、やっぱり優しい。
柔らかく目元を細めてくれる、その顔。
私の好きな笑顔だ。