第5章 glass heart【赤葦京治】
待ちわびたその日。
随分と涼しくなった、秋の午後。
そよそよと頬を撫でてく風が心地いい。
最後に会った時は、まだ残暑が厳しかった。
指折り数えていた今日だけど、赤葦さんを目にした瞬間、そんなもどかしい日々も忘れ去ってしまいそうな程嬉しかった。
久しぶりに会った赤葦さんは、シンプルな秋の装いがよく似合っていて、やっぱり素敵。
こうして隣に並ぶだけでドキドキが止まらない。
待ち合わせ場所から向かう先は、駅からすぐの映画館。
爽やかな澄んだ空気の中二人で歩き、館内へと足を踏み入れる。
飲み物だけ買おうということになり、お互い同じものを注文した。
上映中は何も食べないこと、その上飲み物は必ずコーラ、なんて妙なこだわりまで一緒。
何だかそんな些細なことが、無性に嬉しい。
「席、ここで大丈夫だった?」
「はい。後ろの方が落ちつくので」
「よかった。俺も」
事前に赤葦さんが取ってくれていた座席に座り、忘れないうちにスマホの電源を落とす。
「私この女優さん好きで、出演作は大体見てるんです」
「どの女優さん?」
コーラをひと口飲み、パンフレットを開きながら隣に視線を移した。
「主人公の妹役の、」
私の手元を覗き込んでくる、赤葦さん。
その目には、スクエア型で上部だけに黒く細いフレームが飾られた、ハーフリムのメガネ。
「…目、悪いんですか?」
「頻繁にパソコン使うようになってから視力落ちて。字幕の映画だとこのくらいの距離はちょっと厳しいんだよね」
「すごく似合いますね、メガネ…」
「そう?」
これは…
キュンが半端ない…!
知的オーラが凄まじいんですけど!
めちゃくちゃ頭良さそう…いや、赤葦さんは "良さそう" じゃなくて頭いいんだよね。
わぁ…何か先生みたい…。
もし高校の時こんな先生いたら、絶対好きになってたなぁ!
叶わぬ恋をしても無駄だと思いつつ、赤葦先生の教科だけは頑張っちゃったりして。
やっぱり担当教科は美術かな!学芸員さんだし。
バレー経験あるからバレー部の顧問することになるんだろうか!?
わ!そしたら絶対試合の応援行く!あ、それかマネージャーになる!?いやいや、そんな不純な動機じゃ、赤葦先生にも部員にも失礼ってもんだよね。だったら…
「汐里?」