第5章 glass heart【赤葦京治】
*夢主side*
赤葦さんと過ごした花火の夜。
水族館での一日。
彼の優しさと温かさと、一緒にいる時間の心地よさを知るには、十分だった。
沢山ドキドキして、胸が高鳴って、赤葦さんをもっともっと好きになる。
こんなにも好きになってしまうことに不安がないわけじゃない。
またこの気持ちの行き場をなくすのは、怖い―――。
だけど、ほんの少しだけ彼との距離が近づいている気がするのは…
勘違いじゃないよね…?
少し近づくたび、もっと近くに行きたくなる。
近づいたと思えば、今度はそれだけでは物足りなくなる。
夕日射し込むオレンジ色の観覧車の中、隣同士目が合った時。
触れて欲しいと思ってしまったのは、かなり恥ずかしい本音だ。
『また、連絡する』
そう言ってくれた彼の言葉が現実になったのは、3日後のことだった。
「映画ですか?行きたいです!」
『何か観たいのある?』
「あ、実は気になってるのがあって。ハリウッドの…」
もうすぐ公開で、前から観たいと思っていた作品。
映画館まで足を運ぼうか、ちょうど迷っていたところだ。
でもあれって恋愛映画だから…赤葦さんあんまり…かも…。
「えっと、赤葦さんは?何か他にあります?」
『え、観たかったんだよね?それにしよう』
「いいんですか?」
『いいよ』
電話越しの声は、いつもと同じ。柔らかくて優しい。
ずっとこのまま聞いていたいくらい。
こうして話していると確かに鼓動が速くなるのに、それに反して胸がホカホカする瞬間がある。
赤葦さんって不思議だ。
『じゃあ、また来月』
「はい。おやすみなさい」
『おやすみ』
そのあとしばらく、幸せの余韻に浸る。
ベッドに入ってからも、緩んだ頬は元に戻りそうにない。
彼の仕事の都合で、会えるのは来月。
その日が待ち遠しい。
赤葦さんで頭をいっぱいにしていれば、彼の夢が見られるかも…なんて。
恋する乙女全開の私。
早く、会いたいな。
時間を飛び越えて、今すぐ来月まで行ってしまいたい。