第5章 glass heart【赤葦京治】
カゴに牛乳と食パンを入れていく汐里の横、冷凍庫の中の陳列されたアイスクリームを覗く。
あ、これCMで見て気になってたんだよな。ハー○ンダッツの期間限定もの。
けどここで買えば、家につく頃には原型を留めることなく溶けてしまう。
うちのそばで買って、風呂上がりにでも食べようか。
一人考えていた、そんな時だった。
思いもよらぬ台詞が、耳に入ってきたのは。
「あら~!月島くんの彼女さん!」
声の主である年配の女性は、汐里に近づいてくる。
彼女…?月島の…?
月島って、"あの" 月島…?
「あ…大家さん…。こんばんは…」
「こんばんは。月島くんちに行くの?」
「え、いえ…私、たまたま家がこの近くで…」
「そうだったの?それなら一緒に住んじゃえばいいのに!あー、でもうちのアパートの間取りじゃ狭いわよねぇ?ただでさえ月島くんおっきいし」
「はぁ…」
二人のやり取りから察するに、この女性が言う "月島くん" とは、間違いなく俺のよく知る月島のことだろう。
それなら、汐里が月島の彼女だっていうのは…どういうことだ…?
唐突に聞かされた、思いもよらぬ言葉たち。
その会話を耳に入れつつ頭を過るのは、汐里と月島のいつものやり取り。
口喧嘩しながらも心を許しているかのような、二人の姿だった。
「じゃあ、またね!」
「はい…」
俺がぼんやりしている隙に会計を済ませたその女性は、汐里にひと声掛けコンビニを出ていく。
これは…聞いていいのだろうか?
聞かなかったことにした方がいいのか?
汐里との距離を保ったままそう思案していると、彼女の方から歩み寄ってきた。
「私、ツッキーの彼女じゃありませんから!」
「……うん」
そうだよな…。
月島と…いや、月島じゃなくても、彼氏がいるのに他の男の誘いに乗るような子じゃない。
「さっきの人、ツッキーのアパートの大家さんなんですけど。前ツッキーんちに行った時、ちょっと事情があってそう説明するしかなくて…」
「…そう、なんだ」
モヤッとしたものが腹の中で疼くのがわかった。
月島の家に、汐里が…?
二人はそんな仲だったのか…?