第5章 glass heart【赤葦京治】
恋人じゃない女友達のことを、巷では時々 "妹みたい" なんて表現するけど。
俺にとっての汐里も、そうなのだろうか。
続く言葉を待ってる間にそんなことを考えていれば、意を決したような声が向けられる。
「……もぅ、赤葦さん…」
「はい」
「そういう言い方はダメです」
「何で?」
「だって…
そんなこと言われたら、嬉しくなっちゃうから…」
「……」
……ああ、違う。
妹みたい、って。
そんなんじゃない。
この前と同じだ。
だって俺は、また意味もなく汐里に触れたいと思っている。
こういう感情を抱く自分に正直戸惑う。
俺からしたら汐里は、仲間内の女の子…それだけだった。
なのに今、紛れもなくこの子のことを女として見ているわけで…。
「セクハラって言われなくてよかったよ」
困惑する心を誤魔化すよう冗談めかしてそう言うと、今度は楽しそうに笑う声が響く。
「そんなわけないじゃないですか!」
うん…やっぱり汐里には、この笑顔がよく似合う。
その時―――。
一際大きな音が絶え間なく届き、二人同時に空を仰いだ。
次々咲いては散り視界を埋め尽くす、大輪の花火。
休む暇なく、夜空を煌めかせている。
これを最後に今年の花火大会は締め括られるのだろう。
胸まで轟く音と遠く沸き上がる歓声が、それを知らせてくれる。
「すごい…、綺麗…」
「うん…」
ただそう呟き、魅入ってしまう。
夏の終わりの花火に、吸い込まれるように。
人の行き交う声がハッキリと聞こえ始めた。
さっきまでは掻き消されてしまっていた喧騒だ。
趣に浸る時間は、瞬く間に終わってしまったらしい。
「凄く綺麗でしたね、今の」
「そうだね」
「来てよかったです」
ついさっき怖い思いをしたところなのに、笑ってそんなことを言ってくれる汐里。
本心か、俺への気遣いか。
どちらにしても、汐里の笑顔に嘘はない。