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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



一瞬体が強張った気がしたけれど、抱き寄せた格好のまま、何度も髪を撫でた。


「赤葦さん…、大丈夫。強引で鬱陶しかったけど、怖くなんてなかったから…」


俺を見上げる汐里は、うっすら涙目になりながらも必死でそれを我慢しているように見える。


たぶん、怖かった、と口にすれば、俺が気に病むとでも思ってるんだろう。
そのくらいの想像ができる程度には、俺はこの子のことを知っている。


こんな時にまで俺を気遣う汐里が、いじらしくて、健気で…

何かが胸の底から膨れ上がる。


本当は我慢なんてして欲しくない。
俺を責めたって構わない。
でも、汐里の優しさを無駄にはしたくないから。



「一人にしてごめん…」



せめてこれだけは。
もう一度そう口にして、小さな体を抱き締めた。



花火の打ち上がる音だけが耳に届く。
体に響くそれは、二人分の鼓動の音とも混ざり合っている気がする。
少しの間そうしていると、腕の中の体がモゾッと身じろぎした。


「あーあ…浴衣なんて着てたからダメだったんです」

「え?」

「だって、下駄も浴衣も走りにくいんだもん。洋服なら余裕で逃げ切れました!」


さっきまでの空気を変えるように、頬を膨らませてそんなことを言う。
何だかそれが汐里らしくて…
思わず自分の頬が綻んでしまうのがわかる。



「俺は、汐里の浴衣姿見られて良かったと思ってるけど」


「え…」


「綺麗だし」


ありのまま、何も嘘なんてない。
それなのに汐里は、俺から顔が見えないように真下へと頭を伏せる。
更には両手で胸を押し、俺の腕の中から抜け出してしまった。


手のひらで頬を隠したまま、おすおずと俺を見上げてくる。



どうしてだろう。
何がきっかけかなんてわからないけど…
この前から、汐里のことが無性に可愛く見えるんだ。


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